SBIG CCDカメラ撮像用 自動一次処理プログラム streduc

これは、ST-9やST-10で撮影した画像についてダーク・フラット処理を自動で行うスクリプトのマニュアルです。

概要

このプログラムは観測ログから画像ファイルの情報を引き出し、これに沿ってDark減算・Flat割算を行うものです。
また、最初の部分で、ファイルのリストを作成して、処理のための命令を並べたCLスクリプトファイルを作成します。
これらは「tmp.cl」と「obj.c」lというファイル名で保存されます。
そしてIRAFで上の二つのスクリプトファイルを実行します。
よって、使用後に「tmp.cl」「obj.cl」を確認すれば、どのような動きをしたか知ることができます。

準備

インストール

の2つをパスの通っているディレクトリに置いて、実行権限を与えてください。 例えばパスが通っているディレクトリを~/binとすると streduc.sh, streduction.cl が置いてあるディレクトリで以下を実行します。

mv streduc.sh streduction.cl ~/bin
cd ~/bin
chmod 755 streduc.sh streduction.cl

続いて、ホームフォルダにある"login.cl"に以下の文を追加してください。

task $streduc = ~/bin/streduction.cl

観測データ (fitsファイル)

ファイルは「?0001_001.fits, ?0001_002.fits」のような形式である必要があります。
先頭の?の部分は英字なら大丈夫です。(例: a0001_001.fits, a0001_002.fits,...)
先頭文字は観測を通して共通でなくてはなりません。(Dark, Flatについても同じ文字)

例えば、次のように観測したとします。 このとき、ファイル名は以下のようにしましょう。
--30秒のDark--   --10秒のDark--   --RcのFlat----   --Object------
a0001_001.fits   a0002_001.fits   a0003_001.fits   a0004_001.fits
a0001_002.fits   a0002_002.fits   a0003_002.fits   a0004_002.fits
a0001_003.fits   a0002_003.fits   a0003_003.fits   a0004_003.fits
.                .                .                .
.                .                .                .
a0001_010.fits   a0002_010.fits   a0003_010.fits   a0004_050.fits
--------------   --------------   --------------   -------------- -

※ファイル名の先頭の文字は「a」でなくても構いません。

観測ログ

このプログラムでは、観測ログをもとに処理を行います。
よって決まった形式のログを用意する必要があります。
同じログを通してフィルター名の大文字小文字は揃えてください。
ファイル名はobslog.csvとして、ファイルと同じフォルダに入れてください。

ログの形式

ログは以下のような形式で書いてください。

  ファイル名のヘッダ,枚数,天体名,フィルター,露出時間

また、観測開始時刻などの情報をこれらのあとに続けても大丈夫です。


具体的には次のようなログを用意します。上記の観測を行った場合の例です。
(#はコメント行なのでなくてもよい。)


# ST-10 observation logfile
#File, number, Object, Filter, Exptime(sec), start(JST), comments
a0001,10,dark,-,30,17:00,
a0002,10,dark,-,10,17:10,

a0003,10,flat,R,10,17:20,

a0004,50,Object,R,30,17:30


使用手順

注意事項

まず、ログ(obslog.csv)を確認します。
ここに間違いがあるとうまく動きません。
また、ログに同じ秒数のDarkや、同じフィルターのFlatが複数行あるとうまくいきません。

実行

iraf上で作業ディレクトリに移動し、以下を実行してください。

streduc

そうすると と聞かれますので、処理したい天体の名前を入れてリターンを押してください。
もし、ログ内の天体名がスペースを含んでいるなら、スペースを消すか、どちらかの単語を入力してください。
例えば、ログの天体名の欄を「U Gem」としていた場合は「UGem」と書き換えるか、 Object name:のところで、「U」もしくは「Gem」と打ってください。
このキーワードをもとに検索して、天体撮影時の秒数や使用フィルターの情報を取得します。
よって、他の天体と混同しないように、注意してください。
例えば、「SU UMa」と「PU UMa」を観測していて、「PU UMa」の処理をしたければ、 Object name: のところは「PU」と打ちましょう。


続いて、Header:と聞かれます。
ここではファイル名の先頭の文字を入力してリターンを押してください。

今回の場合は次のようになります。

Object name:Object
Header:a

そうすると処理が始まります。
最後に

done

と表示されれば無事終了です。
Dark減算・Flat割算された結果が、c*.fitsという名前で出力されています。


事前に用意したDark, Flatを使用する方法

このプログラムでは、Dark, Flatは以下のファイル名で出力されます。 例えば、今回仮定したファイルであると、「dark30.fits」「dark10.fits」「nRflat.fits」が出力されます。
事前に用意したDark,Flatを使用する場合は、あらかじめ上のような名前で作業ディレクトリ内に保存しておいてください。Flatは規格化したものを置いてください。
(もちろん秒数やフィルター名は適宜調整してください。)

もしディレクトリ内にdark*や*flat*といった名前のファイルがあれば、最初に以下のような項目が現れます。
Dark frames or Flat Frames exist. Output Them Again?
   YES(Overwrite):[Y] 
   NO(Use Existent Images):[N] 
   Use Only Dark Images:[D] 
   Use Only Flat Images:[F]
   CANCEL:[C]:
これによって用意したDarkやFlatを使うか、上書きするかが決められます。
それぞれの意味は以下の通りです。
Y
ログ通りにDark,Flat合成して、もし同じ名前のファイルがあれば上書きします。
N
Dark合成やFlat合成はせずに、ディレクトリ内のDark,Flatのみで処理を行います。
D
Dark合成はせずに用意したファイルを使用します。Flatは合成して、同じ名前のファイルがあれば上書きします。
F
Flat合成はせずに用意したファイルを使用します。Darkは合成して、同じ名前のファイルがあれば上書きします。
C
キャンセルして終了します。
上記のどれかを入力してリターンを押すと処理が進みます。
また、いずれの場合も、object処理用のDark, Flatが不足しているとエラーで止まります。

更に..

「Darkが10秒と20秒のものが必要だが、10秒のものは事前に用意していて、20秒のものは合成したい」といった場合には、「Y」で大丈夫です。

やり直す場合

処理をやり直す場合は作業ディレクトリ内に残っている「d*.fits」(Dark以外),「c*.fits」をすべて削除してください。
「d*.fits」は作業途中に生成されるファイルです。正常終了時には削除されています。

Dark, Flatの合成画像に関しては上書きできるので問題ありません。



wrote on 2012/2/12 by天文学研究室 M2 中川辰一